高松高等裁判所 昭和31年(う)67号 判決
その(一)は松平山の立木売買について来村々長歯朶尾善市が如何なる職務権限があるか原判決には何等説示がない。原判決の云う贈賄の約束は昭和二八年八月八日であり、右松平山の譲受けが村議会により村の仕事として議決せられ村長たる歯朶尾にその執行が委託せられたのは同年九月一八日であるから村議会の議決及び委託が為される前に歯朶尾が松平山の譲受けについてどの様な権限を有していたのか当然問題になる筈である。然るに原判決は何等この点説明するところがない。この職務権限を特定することなしに歯朶尾村長の職務に関し、賄賂を約束し、同人の職務に関し賄賂を供与したと判示したのは原判決に理由のくいちがいがあると云い、
(中略)
しかし(一)については本件立木売買仮契約並にこれに付随して行われた二百万円授受の約束が所論村議会の決議前であることは所論の通りであるが村長は村事業の計画実施に当つてはその調査立案は勿論該事業が後日議会の決議を得ることを予想して村議会の議決前においても第三者との間に仮契約等を結ぶことも亦村長の職務と云うことができる。従つて被告人大桑が歯朶尾村長と前記立木売買の仮契約をしたこと及びこの仮契約を村議会の決議を経て本契約に移すことに尽力することに対する謝礼として金銭授受の約束をすることは結局歯朶尾村長の職務に関して賄賂を約束したものであり賄賂罪の成立することは疑いを容れない。しかも原判決はこの点について歯朶尾村長の右職務に関して賄賂を約束供与したことを判示しており原判決には何等所論のような違法は認められない。
(裁判長判事 谷弓雄 判事 松永恒雄 判事 合田得太郎)